コラム

オリンピック後はどうなる?今後も訪日外国人観光客が増え続ける理由(後編)

オリンピックは通過点!
今後も訪日外国人旅行者が増え続ける理由とは?

2020年東京オリンピック・パラリンピックを合言葉に、インバウンド対応の機運が高まっています。では、オリンピックが終わったら、訪日外国人観光客は減少したりするのでしょうか?

結論から言うと、オリンピック後も訪日外国人観光客は増え続けると考えられます。というのは、今なぜ急増しているのか、その理由を考えると予想できるからです。

訪日外国人観光客が増え続けている理由

1.アジア各国・地域の経済成長
2.円安基調の為替相場
3.LCCの就航路線・便数の拡大
4.ビザ要件の緩和・免除
5.日本への興味・関心の高さ

このうち、前回(第2回参照)は外的な要因となる1~2について考えてみました。今回は受け入れ側の要因となる3~5について考えてみましょう。

3.LCCの就航路線・便数の拡大

海外旅行の費用で大きな部分を占めるのが航空運賃ですが、LCC(ローコストキャリア)と呼ばれる格安航空会社が世界的に普及してきています。既存の大手航空会社の半分から3分の1という格安の運賃が魅力のLCCは、若者を中心に利用が増加しています。

日本でも航空規制を自由化するオープンスカイ協定(航空自由化協定)や空港ターミナルの整備に伴なって路線や便数を拡大してきました。とくに国際線では過去5年(2013~2017年)でシェアを3倍(7.1%→21.7%)に伸ばしています(下グラフ参照)。

政策とLCC旅客数推移の分析
出典:国土交通省「LCC普及への取り組み  我が国におけるLCCの参入促進」

LCCのビジネスモデルは、効率性を追求することによって利益を生み出すというものです(下記参照)。

LCCのビジネスモデル

●機内サービスを簡素化する。
●低料金で乗客の搭乗率を上げる。
●比較的安価で燃費の良い小型機を用いる。
●短距離を往復することで機体の稼働率を上げる。ほか

そのため、「4時間の壁」が限界とも言われますが、東アジアの主要都市から2~5時間以内で移動できる日本(下記参照)はLCCのビジネスに適していると言えるでしょう。

東京との所要時間

~2時間台 ソウル:2時間30分
~3時間台 北京:3時間55分 上海:3時間15分 台北:3時間40分
~4時間台 香港:4時間50分 マニラ:4時間45分

最近では機体の燃費性能の向上などによって、6~8時間またはそれ以上のフライトが必要なASEAN諸国やオーストラリアなどを結ぶ中長距離路線にもLCCが参入するようになっています。

訪日外国人観光客(全国籍・地域)のLCC利用率は、2016年1~9月で約25%でした(下グラフ参照)。国別に見ると、韓国が60%、フィリピンが53%と半分を超えています。また、タイ、マレーシア、オーストラリアは全国籍・地域(約25%)より多く、いずれも30~40%を占めています。

国籍・地域別にみる訪日観光客のLCC利用率(平成28年1-9月期)
出典:国土交通省 観光庁「訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】」

その後もLCCの就航路線・便数は拡大しており、旅客数・利用率ともに増加しています。既存の大手航空会社も運賃の引き下げに取り組むようになっており、航空運賃という面でも日本への海外旅行がしやすくなっていると言えるでしょう。

4.ビザ要件の緩和・免除

政府はインバウンド対策として2012年より短期滞在ビザの発給要件を緩和してきました。とくに2015年以降は中国にもビザの緩和を拡大し、日本を訪れる中国人観光客が急増するきっかけになりました。

それまで中国は、ビザが免除されている韓国・台湾・香港とは違って、不法就労等の懸念により、ビザの発給が富裕層に限られていました。それを中間層にも拡大した結果、中国は一気に韓国・台湾を抜いて、訪日観光客数が最も多い国になりました(下グラフ参照)。

年別 国・地域ごとの訪日外客数の推移
出典・参考:日本政府観光局(JNTO)「日本の観光統計データ」をもとに作成

     中国    韓国    台湾   香港
2013年 約131万人 約246万人 約221万人 約 75万人
2018年 約838万人 約754万人 約476万人 約221万人
→ 5年間で約6.4倍  約3.1倍  約2.2倍  約2.9倍

短期滞在ビザの免除は、韓国・台湾・香港を含めて68の国・地域に対して実施されています。こうしたビザの緩和・免除は、中国に限らず治安等を考慮して、相手国と協力しながら段階的に進められており、インバウンドを呼び込む効果的な施策となっています。

5.日本への興味・関心の高さ

訪日外国人観光客が増えているそもそもの理由として、日本への興味・関心の高さが挙げられます。日本には海外の人々の興味・関心を引き付ける魅力があるということです。

海外の人々の興味・関心を引き付ける日本の魅力

●めざましい戦後復興を遂げ、G7に参加するような先進国に成長したこと。
●歴史ある文化遺産や、独特な伝統文化・習慣があること。
●温暖で四季がある気候風土で、多様性に富んだ自然を身近に楽しめること。
●電化製品や化粧品、食品など、品質や安全性の高い商品があること。
●アニメやゲーム、オタク文化など、人気のエンターテインメントがあること。ほか

また、日本も官民連携により、こうした魅力を海外に発信してプロモーション展開したり、その好機となる大型イベントを招致したりして、インバウンドの振興に取り組んでいます。

日本の魅力を情報発信する官民連携した施策

2003年 ビジットジャパンキャンペーン開始
2013年 クールジャパン機構設立
2013年 和食がユネスコ無形文化遺産に選定
2019年 ラグビーワールドカップ開催
2020年 東京オリンピック・パラリンピック開催
2025年 大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)開催 ほか

訪日外国人観光客が年々増加するにつれて、日本を訪れるのが2回目以上のリピーターも増加し、今では全体の60%以上に達するようになっています。これも海外からの興味・関心の尽きない魅力が日本にあることを表していると言えるでしょう。

オリンピック後も訪日外国人旅行者が増加し続ける理由
インバウンドへの対応は業種問わず絶好のビジネスチャンス!

オリンピック後も訪日外国人観光客が増加し続ける理由として、今回は受け入れ側の要因となる3~5について考えてみました。

オリンピック後も訪日外国人観光客が増加し続ける理由

1.アジア各国・地域の経済成長
2.円安基調の為替相場
3.LCCの就航路線・便数の拡
4.ビザ要件の緩和・免除
5.日本への興味・関心の高さ

国連世界観光機関(UNWTO)によると、2010年に外国人が一番たくさん訪れた国はフランスで、次にアメリカ、中国と続き、日本は29位でした。それが2015年には16位になり、2018年には11位まで順位を上げています。

政府は2020年には4,000万人、2030年には6,000万人の訪日外国人観光客を迎える目標を掲げており、それに向けて様々な施策が予定されています。インバウンド対応によるビジネスチャンスは、観光や交通、宿泊はもちろん、小売、飲食、レジャー、不動産など、様々な業種に広がっています。この絶好のビジネスチャンスをつかみ、機会損失を防ぐためにも、インバウンド対応はあらゆる事業者にとって不可欠と言えるでしょう。

 

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