コラム
メールマーケティングご担当者様の中には、「重要なメールマガジンを配信したはずが、受信者に届かず迷惑メールフォルダに振り分けられてしまった」というご経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
迷惑メールとして扱われてしまう原因は、配信設定の技術的な問題（例：送信ドメイン認証）だけで発生するわけではありません。実は、そのメール配信が「特定電子メール法」（正式名称：特定電子メールの送信の適正化等に関する法律、通称：特電法）に違反しているサインである可能性が潜んでいます。
この記事では、特定電子メール法と迷惑メールフィルター（特にGmailやYahoo!メールなど）の仕組みの関連性を解説し、配信担当者が送信ボタンを押す前に確認すべき「3つの法令遵守チェックリスト」をご紹介します。
迷惑メールと「特定電子メール法」の密接な関係
迷惑メール判定のロジックは、Gmail、Outlook、Yahoo!メール、国内キャリア（docomo、au、SoftBankなど）といった各メールサービス提供者によって異なりますが、共通して重視している点があります。それは「受信者の反応」です。
迷惑メール判定は「受信者の反応」で決まる
かつての迷惑メールフィルターは、メール本文中の特定のキーワード（例：「儲かる」「無料」など）を検出する単純なものでした。しかし、現在のフィルターはAI（人工知能）を活用し、より高度化していると言えます。
特に重視されるのが、受信者の行動データです。
- 受信者がそのメールを「迷惑メールとして報告」した
- 受信者がそのメールを「未開封のまま削除」した
こうしたネガティブな反応が多い送信元からのメールは、「受信者が望んでいないメール」として学習され、迷惑メールフォルダに振り分けられやすくなります。
「特定電子メール法」違反が迷惑メール報告率を悪化させる理由
ここで「特定電子メール法」が関係してきます。この法律は、受信者の同意なしに広告・宣伝メールを送ることを規制するものですが、その規制内容こそが、前述の「受信者のネガティブな反応」と直結しています。
- 同意のないメール（オプトイン違反） 特定電子メール法では、原則として「事前に同意（オプトイン）を得た相手」にしか広告・宣伝メールを送れません。 もし同意のない相手にメールを送ってしまった場合、受信者は「登録した覚えがない」と感じ、高い確率で「迷惑メールとして報告」ボタンを押すでしょう。これはメールサービス提供者のフィルターにとって、最も強力な「悪い送信者」のシグナルとなります。
- 購読解除ができない（オプトアウト違反） 特定電子メール法では、受信者がいつでも簡単に「購読解除（オプトアウト）」ができるよう、その方法をメール本文に明記することを義務付けています。 もし購読解除リンクが分かりにくい、リンクが切れている、手続きが複雑である場合、受信者は「配信を止めたいのに止められない」という不満を感じます。その結果、仕方なく「迷惑メールとして報告」ボタンを押すことになるのです。
このように、特定電子メール法の規定を守らないメール配信は、受信者の不満を直接的に招き、迷惑メール報告率を上昇させます。その結果、メールサービス提供者のAIフィルターが「この送信者は迷惑メール業者である」と判断し、迷惑メール判定につながってしまう可能性が高まります。
【参考URL】 特定電子メール法の詳細については、総務省の公式サイト（迷惑メール対策に関する総合ページ）で最新の情報をご確認いただけます。 （総務省：迷惑メール対策）
迷惑メール判定を避けるための「3つの法令遵守」必須チェックリスト
では、具体的に何をチェックすればよいのでしょうか。特定電子メール法の要件に基づき、送信前に確認すべき最低限の3つのチェックリストを作成しました。
【Check 1】送信の「同意（オプトイン）」を得ていますか？
広告・宣伝メールを送る大前提です。「過去に取引があったから」「資料請求があったから」という理由だけでは、メールマガジン配信への「同意」があったとは言えないケースがあります。
- Webフォームなどで「メールマガジンの配信に同意する」といったチェックボックスを設け、受信者自らが意思表示する仕組み（オプトイン）を導入していますか？
- 「他社から購入したリスト」や「Webで公開されているアドレスを収集したリスト」など、同意取得のプロセスが不明確なリストを使用していませんか？
同意のないメールは、法律違反であると同時に、迷惑メール報告の最大の要因となります。
【ポイント】同意の「リマインダー」を入れていますか？
たとえ受信者から事前に同意を得ていたとしても、受信者自身がその事実を忘れてしまっているケースは少なくありません。「登録した覚えがない」という誤解は、迷惑メール報告の大きな原因となります。
メールのフッター（署名欄）などに、「このメールは、〇〇（例：□□展示会での名刺交換、〇〇セミナーへのお申込）をいただいた方へお送りしています」といった一文（リマインダー）を記載し、受信者がなぜこのメールを受け取っているのかを思い出せる工夫も、信頼を維持する上で非常に重要です。
※『さぶみっと！メール配信』では、健全なメール配信環境を維持するため、利用規約（https://www.submit.ne.jp/mail/agreement）において、事前に許諾（同意）を得た宛先へのみ配信をお願いしております。
※健全なリスト管理（クリーニング）の重要性については、こちらのコラム「メール配信の「届く」を変える！リストクリーニングの基本と実践」でも詳しく解説しています。
【Check 2】送信者の「表示義務」を果たしていますか？
特定電子メール法では、送信者が誰であるかを明確にするため、以下の情報の表示を義務付けています。これらがメール本文（通常はフッター）に明記されているか確認しましょう。
- 送信者の氏名または名称：企業名やサービス名を正確に記載
- 送信者の住所：実際に活動している住所の記載
- 苦情・問い合わせの受付先：問い合わせ先（電話番号、メールアドレス、フォームURLなど）の明記
これらの情報が欠けていると、受信者に不信感を与え、迷惑メールと誤解される要因になり得ます。
【Check 3】「購読解除（オプトアウト）」の仕組みを確保していますか？
受信者が「もう必要ない」と感じたときに、ストレスなく配信を停止できる仕組みは、法律上の義務であると同時に、送信者の信頼性を守るためにも不可欠です。
- メール本文の分かりやすい場所（通常はフッター）に、「購読解除はこちら」といった案内文と、解除用のリンクまたはメールアドレスが記載されていますか？
- 解除手続きは、分かりやすく簡単（例：数クリック）で完了しますか？
特に、Gmailは2024年以降、1日に5,000件以上のメールを送信する送信者に対し、「ワンクリック購読解除」（List-Unsubscribeヘッダー）の実装を義務化しました。
これは、受信者がメール本文内のリンクを探さなくても、Gmailのインターフェース上（送信者名の横など）に表示される「購読解除」ボタンを押すだけで手続きが完了する仕組みです。Yahoo!メールもこうした送信者要件を強化する同様の傾向にあり、この要件への未対応は、迷惑メール判定リスクを著しく高める要因となります。
【参考URL】 Gmailの送信者要件については、Googleが公開している「メール送信者のガイドライン」で詳細が示されています。（米Yahoo!も同様のガイドライン強化を発表しており、日本のYahoo! JAPANも送信ドメイン認証（DMARC）の推奨など、セキュリティ強化の足並みを揃えています。）
法令遵守だけでは不十分？ メールサービス提供者が重視する「送信者認証」
ここまでの「法令遵守」は、受信者の信頼を得るための「土台」です。しかし、メールサービス提供者に「この送信者は信頼できる」と技術的に証明するためには、もう一つの重要な要素があります。それが「送信ドメイン認証」(SPF, DKIM, DMARC)です。
これは、メールが「なりすまし」ではなく、確かにその送信元から送られた正規のメールであることを証明する、技術的な「身分証明書」のようなものです。
どれだけ法令を遵守し、受信者の同意を得ていても、この「身分証明書」がなければ、メールサービス提供者は「送信者が不明な、怪しいメール」と判断し、迷惑メールフォルダに振り分けてしまう可能性があります。
特に、前述のGmailは、大量送信者に対してSPF、DKIMに加えてDMARCの設定も必須としています。Yahoo! JAPANもDMARCを強く推奨しており、これらに未対応の場合はメールが届かなくなる可能性に言及されています。
※送信ドメイン認証（SPF、DKIM、DMARC）の仕組みと設定方法については、こちらのコラム「SPF・DKIM・DMARCとは？ Gmail送信者ガイドラインで必須の送信ドメイン認証を分かりやすく解説」で詳しく解説しています。
さいごに：法令遵守と技術対応を両立するメール配信
迷惑メール判定を防ぎ、受信者に確実にメールを届けるためには、
- 特定電子メール法を守り、受信者の同意と信頼を得ること（法令遵守）
- Gmailなどが要求する技術要件（送信者認証やワンクリック購読解除）を満たすこと（技術対応）
この両方を満たす必要があります。
しかし、こうした法令遵守や、日々更新される技術要件に、自社だけで対応し続けるのは大きな負担となり得ます。
『さぶみっと！メール配信』が、メールマーケティングご担当者様の「法令遵守」と「技術対応」の両立を支援し、シンプルで直感的な機能によってメール配信の「届く」をサポートします。
『さぶみっと！メール配信』で実現するコンプライアンス対応
特定電子メール法やメールサービス提供者のガイドラインで要求される、受信者のための「購読解除（オプトアウト）の仕組み」の設置を、標準機能でサポートしています。
- 購読解除フォームの簡単設置
- 受信者がいつでも簡単に購読を解除できる専用フォームを、専門知識なしで作成できます。メール本文には、そのフォームへのURLを記載するだけで、法令要件を満たす導線を確保します。 （詳細はこちら：各種フォーム設定）
- 登録・解除完了メールによる意思確認
- 読者がフォームから登録・解除を行った際に、確認のメール（完了メール）を自動送信する設定が可能です。これにより、受信者の意思を明確に記録し、トラブルを未然に防ぐことにもつながります。 （詳細はこちら：完了メール設定）
- ワンクリック登録解除リンク（List-Unsubscribe）対応
- Gmailの送信者ガイドラインで必須とされている「ワンクリック購読解除」の技術（List-Unsubscribeヘッダー）にも標準で対応しています。これにより、受信者はメールクライアントのUIから直接購読解除が可能となり、迷惑メール報告のリスクを低減させます。 （詳細はこちら：Gmailの「メール送信者のガイドライン」変更への対応について）
法令と技術の両面からメール配信の健全性を保つことは、読者との長期的な信頼関係を築くための第一歩です。
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