コラム

AIレコメンドエンジンとは? 活躍するシーンから選び方まで徹底解説

 

大手ECサイトから始まったおすすめ表示機能(レコメンド)は、近年ECサイトだけではなく、SNSやアプリなどでも使われるようになり、一般的な機能になりました。

これまでのレコメンドエンジンは、何を一緒に見ているか、何を一緒に買っているかなどの行動履歴からおすすめ表示をしていましたが、現在ではAI、特に機械学習を用いた予測まで行うことができるAIレコメンドエンジンが主流になりつつあります。

本記事では、AIレコメンドエンジンについての基礎知識のほか、活用シーンについても紹介します。

 

 

AIとは?

近年、AI技術は飛躍的に発達し、機械学習やディープラーニングという、これまで耳なじみのなかった言葉を聞く機会が増えました。

AI(人工知能)とは、人間と同じようにさまざまな情報から自然と特徴を捉えた分析を行い、学習に活かしたり、会話をしたりする人間の思考や行動をコンピューターシステムで行うものです。

AI=機械学習という言葉を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、機械学習とはデータ解析技術の1つで、大量のデータと特徴を与えることで、分析の精度を上げたり、学習した結果に基づき判断・予測を行ったりするものです。

ディープラーニング(深層学習)は、機械学習の手法の中の一つで、人間の脳神経回路に似たアルゴリズムを持ち、膨大なデータの中からルールや相関性などの特徴を学習して、判断・予測を行います。これらAIの進化により、これまでは、与えられた情報や特徴のみを基にして判断するものでしたが、機械自らが学習した結果から推測し、自己判断も行えるようになりました。

AIレコメンドとは

AIレコメンドとは、上述のAI技術が搭載されたレコメンドエンジンのことです。これまでのレコメンドエンジンとの違いは大きく分けて2つあります。

1つめは、従来のレコメンドエンジンが解析できなかった、画像・テキスト・音楽など、行動履歴以外のデータ解析も可能になり、メディアサイトやアプリなど、レコメンドの活用の幅が広がったことです。

2つめは、AIの進化により、行動履歴などの膨大なデータの中から自ら発見した特徴をレコメンドデータ生成に活かし、これまでのアルゴリズムでは実現できなかった、コンバージョンに貢献しそうな商品やコンテンツを精度高く予測できるようになったことです。

これら分析内容の違いと精度の高い予測によって、より顧客一人ひとりの好みに合ったおすすめ表示ができるようになった結果、パーソナライゼーション機能が強化されたことがAIレコメンドの一番のメリットと言えます。

その一方で、AI活用によるデメリットがあることも事実です。例えば、「なぜこの商品がおすすめ表示されているのだろう?」のように、おすすめ表示されている商品やコンテンツの不整合が起きたとしても、AIがどのような特徴を掴み、判断・予測してそれらを表示しているのか調査ができないという点です。

また、パーソナライズレコメンドに限っては、一人ひとり表示されている商品やコンテンツが異なるため、サイト運用者は、どのような商品が出ているか確認する術がありません。

AIレコメンドの導入を検討する際はこのようなデメリットを踏まえた上で、自分たちがレコメンドで実現したい内容にAIレコメンドが適しているのか、十分検討する必要があります。

AIレコメンドが活用されるシーン

AIレコメンドが活用されているシーンとして、馴染みがあるのはやはりECサイトですが、それだけでなく他にも多くのシーンで活用されています。ここでは、具体的にどのようなシーンで活用されているかご紹介します。

ECサイト

ECサイトでは、購入予測商品をおすすめすることによる購入率アップを図るため、AIレコメンドが活用されています。

AIが、ユーザー個人または似たような行動履歴があるユーザーの特徴を分析し、購入しそうな商品を予測しおすすめとして表示します。レコメンドを取り入れた結果、スタッフも予測できなかったニーズのある商品をレコメンドでき、大きな売上につながったというECサイトの例もあります。

AIレコメンドによって、思わぬ商品との出会いが生まれ、ユーザーにとってもサイト内のショッピングが今まで以上に楽しい時間となり、店舗への信頼度アップにも貢献します。

SNS

SNSは、ユーザーの1日あたりの利用時間やDAU(Daily Active Users/1日あたりのアクティブユーザー数)、MAU(Monthly Active Users/月あたりのアクティブユーザー数)が重要なKPIとなりますが、これらの数字を伸ばすためには、日々ユーザーの興味・関心を惹き続けなければなりません。そこでAIレコメンドが活用されています。

SNSアプリ内で、ユーザーはコンテンツの投稿・閲覧・いいね・シェア・コメントといったさまざまな行動をしています。これらの膨大な行動履歴等やインタラクションを含めたユーザーの行動をAIが解析し、より個人の好みに合ったコンテンツをレコメンドし続けています。このように、AIレコメンドがSNSの利用継続を後押ししているのです。

特に他人の投稿や動画を楽しむSNSでは、検索機能はあるものの、ほとんどのユーザーが自動で流れてくるおすすめを見続けるスタイルとなりました。検索やナビゲーションに頼らずにおすすめ表示によって閲覧を続けるというスタイルは、インターネット利用者の行動に大きな影響を与えています。
近年は、インターネット利用者の多くがSNS慣れしているため、能動的に情報を探すのではなく、受動的に情報を受け取ることが当たり前になったのです。

今後、ECサイトやSNSだけではなく、コーポレートサイトやメディアサイトにおいても、レコメンド表示が重要になることはほぼ間違いないでしょう。

メディアサイト

メディアサイトの代表格である情報系サイトは、PV数・会員登録者数がKPIになっていることが多いと思います。
ここでもやはり重要になってくるのは、ユーザーの興味・関心を惹き続け、1日でも多くサイトに訪れてもらうことです。コンテンツ数もPV数も膨大なサイトだからこそ、一人ひとりに合った情報をお届けするためにAIレコメンドが活用されています。

情報系サイトで特徴的なのが、会員登録する際に、ユーザー自身で好みを登録してもらうことです。例えば、ニュースサイトでは「政治」「芸能」「スポーツ」など自身が興味のあるカテゴリを、美容系情報サイトでは「敏感肌」「くすみ」「肌荒れ」など自身のお悩みを登録したことはないでしょうか。

このように、会員登録時のアンケートで得たユーザー個人の好みは、AIが高精度のレコメンドデータを生成するうえで大事な判断材料の1つとなります。AIのデータ解析・判断・予測の他、ユーザーから得られた好みを活かすことで、よりユーザーの好みに合ったおすすめ提示が可能となり、PV数アップが期待できます。

また、好みに合った情報を提案してくれるサイトは、ユーザーからの信頼を得ることができ、その結果、会員登録者数増加にも貢献しています。

動画配信サービス

動画配信サービスもSNS同様に、レコメンドを使う目的はユーザーの興味・関心を惹き続け、1日の利用時間、DAU、MAUアップによるLTV(Life Time Value/顧客生涯価値)の増加です。そのためには、精度が高い特徴解析と予測が必要だからこそ、AIレコメンドが活用されています。

また、動画配信サービスなどには、解約を防止するため「休会」制度がありますが、休会ユーザーを呼び戻すときにもAIレコメンドが使われているケースがあります。
休会をしていなくても、長い間サービスにログインしていないと「あなたが興味ありそうな動画の配信が始まりました」という内容のメールやアプリのプッシュ通知が来たという経験はないでしょうか?
この時、ユーザー個人の興味・関心から外れたコンテンツのおすすめは逆効果となり解約に繋がる恐れがあるので、高精度なパーソナライズレコメンドが求められます。
そこで精度が高いAIレコメンドを活用し、休会ユーザーの復活やサービス再訪へのきっかけを作っているのです。

マッチングサービス

仕事をお願いしたい人と仕事をしたい人を繋ぐ、貸りたい人と貸したい人を繋ぐなど、需要と供給を結びつけるためのマッチングサービスですが、従来は、希望条件で絞り込んで検索することが一般的でした。

しかし、マッチングサービスが根付いてきた今、登録者数が多く選べなかったり、希望条件によってはマッチする人がいなかったりするなど、検索だけでは探しきれず、それを補うような施策が必要になってきました。そこで、AIレコメンドが活用されています。

例えば人材サービスを例に挙げると、AIが求職者の経歴や資格といったプロフィールを考慮した上で企業の希望にマッチする人材を提案し、求職者には、企業の選考活動を分析して書類選考に通過しやすい求人情報をおすすめするなど、双方に向けてAIレコメンドが活用されています。

 

まとめ

本記事では、AIレコメンドエンジンの基礎からメリット・デメリット、活用シーンまでを説明しました。

AIレコメンドは、サービスを使う側の利便性向上に欠かせない機能になっていますです。
また、サービス提供側は、AIレコメンドの活用によって、よりユーザーに有益な情報やサービスを提供することができます。

これにより、サービス提供企業は、市場での優位性を確立し、信頼度、売上アップなどの成果を上げることが期待できます。

また昨今では、Googleが提供する「Vertex AI Search」のレコメンデーション機能というAIレコメンドも注目を集めています。
これは、自社の製品やメディアラインナップと顧客の閲覧・購入履歴などのデータを使って、オリジナルのAIモデルを生成・利用できるサービスで、さまざまな大企業にも採択され始めています。
Vertex AI Searchのレコメンデーション機能の利用には、専門知識とかなりの工数が必要となるため、導入ハードルが高いというのが現状ではありますが、GoogleのAI技術を活用したレコメンドとして注目度は高まっています。

ただし、AIはあくまで機械が学習データをもとにして判断をしているにすぎません。人間の持つ脳のゆらぎのように、一見不合理に見える判断をしたり、知らないものに対する判断をしたりすることは得意ではありません。AIは万能なわけではないということは理解しておく必要があります。

また、ユーザーに興味を持ってもらえるコンテンツがあってこそのレコメンドであり、それを作り出すのは人である、ということも認識しておきましょう。
AIを利用したツールと人が作り出すコンテンツの両方をうまく活用して自社のビジネスに役立てていきましょう。

 

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